日  経




2003年(平成15年) 1月23日 (木曜日)     かんさい21・近畿

      多芸多才     来て 観て 聴いて

       「ヒナステラ尽くし」挑む
 アルゼンチンの作曲家、ヒナステラの没後二十年に合わせて、大阪在住のピアニスト、瀬田敦子さん(47)がヒナステラの作品だけで構成するリサイタルを開く。「ピアニストの自覚を待ったのは四十歳を過ぎてから」という遅咲き。十年前、アルゼンチンのピアニストに教わったヒナステラの曲は、知られていない分、演奏の自由が大きく、 「こうも弾ける、ああも弾けると格闘しているうちに、音楽の喜びを取り戻した」。
 曲目は「アルゼンチン舞曲集」や、最期の作品で「壮絶な曲」という「ピアノソナタ第三番」など。一人の作曲家の作品だけで一晩の演奏会を組むのは初めてだけに、エネルギーが持つのか」という不安がある半面、「うまく回れば、すごい世界に行けるかもしれない」と、期待を抱いている。2月12目、大阪のザ・フエニックスホール。






    日経ネット関西版         関西からひとこと

【2006年12月30日】

街角の音楽ホールから(9)  社会に開かれた施設として  谷本裕(12月30日)

(抜粋)

 ポーランド南西部、チェコ国境近くの町バルブジフ。今年9月、同地のオーケストラに大阪のピアニストが客演した。瀬田敦子さん。独自のレパートリーで近年、活動を世界に広げている。
 弾いたのは、アルゼンチンの作曲家ヒナステラ(1916-83)の協奏曲。同国初演だった。インディオの音楽に通じる叙情やリズム、重量級の超絶技巧が必要な難曲だが、本番を収録したDVDには、颯爽(さっそう)と鍵盤に向かう姿が刻まれていた。

 ヒナステラは彼女のレパートリーの核。92年、作曲家ゆかりの音楽家と出会い、手掛けるようになった。 2003年春、私たちのホールでのリサイタルも、彼の作品だけでプログラムを組んだ。こうした現代の、しかも殆(ほとん)ど無名の作曲家の曲で公演を編む意義は大きいが、集客上は冒険。だが、だからこそリサイタルは実現した。

 リサイタルは、私たちが開館から続ける「エヴオリューション・シリーズ」公演で企画を公募、審査で選ばれた音楽家に施設を原則、無料提供。広報や券売も支援する。

 公演はその年の「音楽クリティッククラブ奨励賞」を受賞。同じ内容で東京でも行い、イタリアの国際コンクールでは特別賞を得た。05年にはニューヨークのカーネギーホールにビュー。欧州や中東にも客演、キャリアを着々と築いている。彼女に限らず、このシリーズをバネに活動を広げるのは嬉しい。

ヒナステラの協奏曲演奏後、聴衆から花tばを受ける瀬田さん
(2006年9月、ポーランド・バルブジフ)