関西音楽新聞



(関西音楽新聞 2003年2月1日)


         ヒナステラ没後20年記念


南米の魅力たっぷりと

瀬田敦子ピアノリサイタル


 南米アルゼンチンを代表する作曲家の一人、アルベルト・ヒナステラ(1916〜83)の没後20年を記念した<瀬田敦子ピアノリサイタル>が2月12日(水)午後7時から大阪市北区のザ・フェニックスホールで開催される。
 ヒナステラには一部に前衛的な作品もあるが、フォルクローレやインディオの音楽などから影響を受けたものが多い。リサイタルでは舞曲のほか2曲のソナタなどが演奏される。
 瀬田敦子=写真=は大阪府池田市出身のピアニストで、ヒナステラ没後10年記念演奏会にも出演している。その後、ポーランドやスイスなどで行った海外のリサイタルでもヒナステラの作品を必ずプログラムに加えている。各国の地元紙は「傑出した演奏解釈」などと評価も高い。
 瀬田はヒナステラの作品との出会いを次のように話している。
 「母校(大阪教育大)で教えていたことがあるピアニストのエドゥアルド・デルガード先生の弾くヒナステラを聴いた途端、彼の音楽にいっぺんに魅せられてしまいました。先生は彼と親交のあった人でしたから、その音楽をよく理解していました」
 アルゼンチン出身のデルガードは、アルゲリッチやゲルバーなどを育てたス力ラムッツァ門下の一人。瀬田は彼に師事し、アルゼンチン音楽独特の技術とセンスを磨いた。同様に「『一音入魂』の素晴らしさを教えてくれたのも先生です」と瀬田は話している。





(関西音楽新聞 2003年4月1日  白石知雄)


圧倒的に面白かった民族色豊かな小品群

瀬田 敦子ピアノリサイタル


アルぜンチンと言えば、豊かな民族音楽と、植民地時代の豪奢な歌劇場が平然と共存する国。ヒナステラに十年来、取り組んでいるピアニスト、瀬田敦子の演奏を聴く限り、ビアソラの師匠だっだこの人の音楽も、ひとつのイメージにすっきり収まるものではなさそうだ。この公演は、ホールが企画を公募した「エヴォリューション・シリーズ」の一環であり、特に今回はパンフレットの解説(川端美都子)が、ガウチョやインディオの音楽の情報をびっしり書き込む力作だった。窓外に夜景が見える開放的な会場で、解説を手に、自由に連想を巡らせながら音を聞くのは、刺激的な経験だったのではないだろうか。演奏は、前半の、民族色豊かな小品群が、圧倒的に面白かった。「アルゼンチン舞曲集」では、敏捷なりズム感に引き込まれ、「ミロンガ」では、自在なルバートに魅せられた。勢いがあるが、決して雑ではない。合いの手を入れるように、時々、伴奏音型を浮き立たせたり、芸が細かい。ノリと閃きを大切にする演奏スタイルは、後半のピアノソナタ第1、3番でも変わらない。大柄で精力的で、ヴィラ=ロボスの民族叙事詩を連想させる仕上がりだっだ。だが、ヒナステラは、なぜ、これらの曲を「ソナタ」と名付けたのだろう。単なる民族派ではない一面がある気がずる。いつか、さらに煮詰めた解釈を聴きたい。
(2月12日、ザ・フェニックスホール)






(関西音楽新聞 2004年2月1日)
-2003年度-

音楽クリティック・クラブ賞

オペラ2団体/ピアノ2氏に

 第24回2003年度音楽クリティック・クラブ賞の贈賞式が1月17日、大阪市中央区の大阪倶楽部で行われた。受賞者は次の通り。

 【音楽クリティック・クラブ賞】
(1)堺シティオペラ第18回定期/プッチーニ『三部作』公演(9月6・7日堺市民会館大ホール)
(2)ザ・カレッジ・オペラハウス20世紀オペラシリーズ3『沈黙』(松村禎三作曲)
      公演(11月7・9日、ザ・カレッジ・オペラハウス)

  【音楽クリティック・クラブ奨励賞】
(3)瀬田敦子ピアノリサイタル/ヒナステラ没後20年記念(2月12日、ザ・フェニックスホール)
(4)中野慶理ピアノリサイタル(5月6日、9月16日、いずみホール)

受賞理由は
(1)上演意欲同様その演奏水準も全国のトップ級   (日下部吉彦氏評)
(2)キリシタン殉教の題材は現代社会にも通じる問題を提起、さらにオペラの可能性と魅力を創出
    (嶋田邦雄氏評)
(3)作曲者への10年来の取り組みが演奏に結実。企画したホール関係者の努力も称えたい
    (白石知雄氏評)
(4)持ち前の美音に構造把握が加わってロマン派から近代までの作品を見事に解釈した
    (横原千史氏評)。


【左から】中野慶理氏(ピアニスト)、中村孝義氏(ザ・カレッジ・オペラハウス館長)
瀬田敦子氏(ピアニスト)、安則雄馬氏(堺シティオペラ副会長)